諸君　私は釣りが好きだ
諸君　私は釣りが大好きだ

投げ釣りが好きだ
サビキ釣りが好きだ
ウキ釣りが好きだ
フカセ釣りが好きだ

ヘチ釣りが好きだ
カゴ釣りが好きだ
生き餌釣りが好きだ

ルアー釣りが好きだ
船釣りが好きだ

漁港で　堤防で　

磯で　沖で
内房で　外房で
南房で　他県で

この大海原で行われるありとあらゆる釣り行動が大好きだ

コマセを撒いて、飛沫と共に魚が集まってくるのが好きだ
空中高く放り上げられた魚が自分の手の平に収まった時など心がおどる

長いロッドを操り、100m以上先の海に仕掛けを投げるのが好きだ
ゆっくりゆっくりリールを巻き海から飛び出してきた魚をクーラーボックスに入れた時など胸がすくような気持ちだった

疑似餌を投げ、魚たちを騙して釣るのが好きだ
全く釣れずに魚の気配を感じない大海原に、何度も何度もルアーを投げる自分に感動すら覚える

赤く光る電気ウキが、ふとした瞬間に沈んでいく様などはもうたまらない
歓喜の声を叫ぶ釣り人達が金切り声を上げながらリールを巻いている姿も最高だ

釣り人が必要としていない哀れな魚達が健気にも抵抗しようとしてきたのを

無慈悲に海に放り投げた時など絶頂すら覚える

仕掛けを滅茶苦茶にされるのが好きだ
必死に投げた仕掛けを上げてみると、ぐちゃぐちゃになって使い物にならなくなっているのはとてもとても悲しいものだ

全く魚が釣れず、ボウズとなり言い訳をしながら帰路につくのが好きだ
餌やルアー、仕掛けが無意味に無くなり、ただただ穏やかな時が流れていくのは屈辱の極みだ

諸君　私は釣りを、天国か地獄か分からない釣りを望んでいる
諸君　私と心を共にする釣り人の諸君
君達は一体何を望んでいる？

更なる釣りを望むか？
情け容赦のない坊主の様な釣りを望むか？
テクニックの限りを尽くし三万にものぼるの魚類を釣る、嵐の様な釣りを望むか？

『つーり！　つーり！　つーり！』

よろしい　ならば釣りだ。

我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとするロッドだ
だがこの怠惰な社会の底で歯車として堪え続けてきた我々にただの釣りではもはや足りない！！

大釣りを！！
一心不乱の大釣りを！！